日本ではまだまだ知名度が低いトーマスウェア社のブライドルレザー。
しかし、英国に現存する数少ない大規模なタンナーで非常に重要な存在です。(タンナーとは皮を革へなめす業者のことです。)
では、トーマスウェア社はどのようなタンナーなのでしょうか。
結論から言いますと、英国のブライドルレザーの伝統を守るにはなくてはならない存在です。
今回は、そのトーマスウェア社についてブライドルレザーの専門店である塩原レザーの塩原朋和が詳しく解説します!
トーマスウェア社とは
トーマスウェア社は、英国第三の都市ブリストルに所在をするタンナーです。
タンナーとは、生の皮(スキン)を革(レザー)へなめす業者のことです。
正式名称は「THOMAS WARE & SONS LTD」と言い、日本では「トーマスウェア社のブライドルレザー」などと呼ばれています。
創業は1860年で160年の歴史を誇り、英国でも数少なくなったタンナーの1つです。
元々、別の家業で受け継がれていたタンナーをトーマスウェア氏が受け継ぎ、その後、息子へと引き継がれました。
トーマスウェアの息子の弟子であったブレアリー氏が、その後、トーマスウェア社を引き継ぎました。
ブレアリー氏は、現在の代表を務めるアリスター氏の祖父にあたります。
トーマスウェア社の特徴は、何と言っても大規模なタンナーで敷地の規模は約6,000坪を誇ります。
6,000坪とはサッカーグラウンド5面とほぼ同じ大きさで、都会の中に所在するタンナーとしては世界的に見てもこの規模は珍しいことです。
トーマスウェア社の工場の様子
ブリストルの中心地から徒歩で15分ほどの場所にトーマスウェア社があります。
規模が大きいことから各施設も大きく、特にピット槽が100を超え世界的に見ても有数の規模です。
また、トーマスウェア社でなめされた革は、すべて同社で仕上げ工程までを行うのではなく英国内外の皮革製造業者へ供給されます。
トーマスウェア社では、ブライドルレザーだけではなくサドルレザーなども多く製造しています。
それらの革は工業用品を収納するのケースや軍用品にされています。
また、工場内には製品に加工されるブースもあり、靴の底革に使用されるパーツなども製造も行われています。
下記の動画は、トーマスウェア社が製作をした動画です。工場内の様子がよく分かるのでご興味がございましたらご参照ください。
トーマスウェア社のブライドルレザーの特徴
トーマスウェア社のブライドルレザーの特徴は、受注生産制で発注業者の希望によって表面の見栄えや風合いが異なります。
塩原レザーで扱うトーマスウェア社のブライドルレザーは芯通しの加工が施されています。


芯通しとは、革の芯まで表面のカラーを浸透される加工のことです。
芯通しの加工を施すと床面(表面とは反対側の面)が同じ色味になりますが、革の硬さは柔らかくなる傾向にあります。
財布類などに薄く漉いた場合のブライドルレザーはかなり柔らかい印象になります。
また、芯通しの加工の際に染料が繊維層に入り革が膨張します。
一定の期間、乾燥させることで繊維に問題はございませんが表面に血筋の跡などが目立ちやすくなります。
なお、すべてのトーマスウェア社のブライドルレザーが同じ風合いとは限りませんのでご注意ください。
ブライドルレザーの製造部位
・ショルダー部位:一般的なダブルショルダー部位の形状で発注しだいで薄いものから4mm前後のものまであります。
・ベンズ部位:基本的にシングルバットよ呼ばれる150cm×60cmの形状ですが、特注としてダブルバッドと呼ばれる形状の場合もあり、これは大規模なタンナーならではのあらゆる案件に対応できるようです。
・ベリー部位:繊維が比較的に弱いことから革製品に使用されることは少ないので、塩原レザーで使用されることがない部位ですが壁材などに重宝されています。
カラーサンプル
塩原レザーで取り扱っているトーマスウェア社のブライドルレザーのカラーサンプルです。
明るい色は、若干の色ブレが発生する場合がありますので予めご理解ください。
また、状況によっては表面の加工などが異なる場合がございますので、製品をご注文いただく際は念のため詳細をご確認ください。
・ブラック
・ネイビー
・ブルー
・チョコ
・ヘーゼル
・タン
・ダークグリーン
・バーガンディ
ブルームの特徴
トーマスウェア社のブライドルレザーのブルームの特徴は、多めのグリースが塗り込まれている場合が多いです。
一定の間、保管をした後は表面が真っ白になるほどのブルームが現れます。
しかし、製品の製作中にブルームがはがれ落ちてしまう場合や製作時に添えている指の温度でブルームが消えてしまうことが多いです。
また、一度ブルームが消えてしまうと、表面にグリース成分が残っていない限り再ブルームはしないと思ってください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
トーマスウェア社のブライドルレザーは、まだまだ希少な素材ですがこれから流通が増えるのではないかと思います。
また、原皮の状態から表面の仕上げ工程までを一貫で行うタンナーは減りつつあるので、このまま未来へと受け継いでいただきたいです。
トーマスウェア社のブライドルレザー製品のご購入を検討中の方は、この情報をご活用いただければと思います。
なお、塩原レザーのトーマスウェア社製ブライドルレザーを使用した製品はこちらからご覧いただけます。