「ホーウィンスタンプ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
ホーウィン社製のシェルコードバンが、世界中の愛好家から認知され、人気なのは言うまでもありません。
その1枚革の背面に、ホーウィン社のコードバンである証となるスタンプが押されています。
それが”ホーウィンスタンプ”です!
今回は、そのホーウィンスタンプについて、コードバン専門店である塩原レザーの塩原朋和が解説したいと思います!
この特集記事を最後までご覧いただきますと以下の内容が分かります!
・ホーウィンスタンプとは
・ホーウィンスタンプの3パターン
・幻のゴーストホーウィンスタンプとは
・スタンプ面のパーツ取りは困難の極み
・スタンプ面の製品の使い始めについて
・スタンプ面の手入れ方法
はじめて当サイトへお越しいただいた方もいらっしゃると思います。
本題に入る前に、この記事を書いている塩原レザーについて簡単にご紹介をさせていただければと思います。
2008年にブライドルレザーの専門店として塩原レザーは創業しました。
2016年からはコードバンを定番素材に加え、ブライドルレザーとコードバンの専門店として運営しております!
コードバンもブライドルレザーも、革を製造をする業者や仕上げ方法によって、風合いや印象など素材感が異なります。
塩原レザーでは10年以上に渡って製品を製作しており、素材や製品について最前線で日々観察をしているので信用していただける内容だと思います。
なお、塩原レザーについての詳細は、下記のリンク先にてご覧いただけます!
ホーウィンスタンプとは
ホーウィン社が製造したコードバンの背面には、その証としてスタンプが押されます。
このスタンプのことをホーウィンスタンプと呼び、背面に押されていることから通常の製品ではこのスタンプは確認できません。
しかし、このスタンプ面をあえて製品の前面に使用したものは、一部の愛好家からはその希少性から人気があります。
上記の画像は、ホーウィン社製シェルコードバンの#4色の1枚革です。
(縦長の1枚目が背面で、2枚目が通常の表面)
背面の中央にホーウィン社のロゴであるスタンプが押印されています。
このスタンプは機械による印字ではなく、ゴム印で押印されており1枚1枚表情がことなり、綺麗なスタンプは希少価値が高くなります。
スタンプのサイズは、横12cm×縦9cmほどで手のひらよりも一回り小さいサイズ感です。
なお、上記の画像にてホーウィン社のロゴのスタンプ以外にも印字されているものがご覧ただけると思います。
この印字は、ロゴのスタンプとは異なり機械による印字です。
「HORWEEN-USA」=ホーウィン社である証の印字
「1.3ft2」=サイズを表す表記で単位はスクエアフィート、1.3は実際のサイズでft2は単位の表示です。
「1117 4」=製造年月日などを表す印字
ホーウィンスタンプの3パターン
ホーウィンスタンプには、大きく分けて3つのパターンが存在します。
この項目では、その3つのパターンとオリジナルのホーウィンスタンプの様々なケースを解説します!
複製されたホーウィンスタンプ
ホーウィン社製シェルコードバンを使用した製品は、その製品自体が希少価値が高いです。
そういったことから、サイズ感の異なる複製されたホーウィンスタンプがパーツの背面などに押印されていることがあります。
これは、ホーウィン社で押されたオリジナルのスタンプとは異なり、革製品を製造するメーカーなどによって複製されたゴム印で押印されたものです。
リスタンプされたホーウィンスタンプ
ホーウィン社で働いているまたは働いていた一部の従業員が、別のブランドとして革製品を製造し販売しています。
そのメーカー製品には、背面に押すオリジナルスタンプを使用したと思われるホーウィンスタンプが、製品の要所に複数押印されているようです。
これは人それぞれの考え方次第だと思いますが、1枚革の背面に1箇所のみ押されているオリジナルのホーウィンスタンプとは希少価値の観点から、分けて捉える必要があるかなと思います。
オリジナルのホーウィンスタンプ
ホーウィン社製シェルコードバンの背面には、基本的にすべての1枚革に1個のホーウィンスタンプが押印されています。
このスタンプには、綺麗に押されている場合もあれば、それと認識しずらい場合もあり、さらには薄い場合もあります。
なお、塩原レザーのホーウィンスタンプ製品はオリジナルのスタンプのみ使用し、さらに綺麗なスタンプ面がパーツとして取れる場合のみ使用しております!
以下は、それぞれ異なるパターンのオリジナルのホーウィンスタンプです。
・生成り色下地&製品のフロント部分にスタンプ
きれいなホーウィンスタンプが製品のど真ん中に押された製品は、希少価値が最も高く存在感が抜群です。
パーツ取りを行う際には、このホーウィンスタンプ部分を軸にパーツ取りを行います。
そういった要因からハギレ革が多く出るため、本来の表面を使用した製品よりも高額になることも考えられます。
本来の表面のカラーがブラウン系の#8、ダークコニャック、#4、バーボンの背面は、基本的に生成りの下地にホーウィンスタンプが押印された仕様になります。
・有色系下地&製品のフロント部分にスタンプ
生成りの下地に押されたホーウィンスタンプとは、下地の色味が異なります。
本来の表面のカラーがブラックやネイビー、グリーンの背面は、このように青味掛かった下地にスタンプが押された仕様になります。
パーツ取りの困難さなどは、生成りのそれと同じで、製品のフロント部分にスタンプ面のパーツが配置されたものは非常に希少価値が高いです!
・ホーウィンスタンプ部分が使用された製品
上記でご紹介したホーウィンスタンプが製品のフロント部分に来るようにパーツ取りされたものよりは、多少価値が下がります。
しかし、見た目で綺麗なスタンプの一部がパーツに使用されている場合であっても、希少価値が高く人気があります!
コードバンの中でも、圧倒的に高額なホーウィン社のコードバンです。
革製品を製造する業者としては、できるだけ多くのパーツを取りたいと考えます。
塩原レザーの場合は、本来の表面でパーツ取りを行い、背面を観た時にたまたま綺麗なホーウィンスタンプがある場合には、このような製品を製造することがあります。
・濃く汚いスタンプ
ホーウィンスタンプを全面に出している製品は、ほとんどが綺麗に押印されたスタンプであるため、このスタンプをご覧いただくと汚く見えると思います。
しかし、ここ最近、入荷したホーウィンコードバンのスタンプの多くがこの印象です。
この事からも、綺麗なホーウィンスタンプがいかに希少価値が高いのかをご理解いただけると思います。
・薄いスタンプ
スタンプが濃い場合もあれば、薄い場合もあります。
上記の画像で確認できるぐらいのスタンプでしたら、よく見る標準的なスタンプです。
しかし、薄いスタンプの場合は、日常のご使用や手入れによって、スタンプが消えてしまうことが想定されるので、塩原レザーでは基本的に製品化をしておりません。
・消えかかったスタンプ
最後は、薄く消えかかったホーウィンスタンプです。
こういったスタンプの状態も良く見かけます。
これは意図的に薄く押されていることも考えられます。
コードバンは完成後、上へ上へと重ねて保管されているのをよく目にします。
特にバーボンなどの淡い色味のコードバンは、濃いインクでスタンプされたものが重った場合、下のあるコードバンの表面にインクが移ってしまう可能性があるからだと思われます。
幻のゴーストホーウィンスタンプとは
ホーウィンスタンプについては、ある程度、ご理解をいただけたと思います。
しかし、ホーウィンスタンプには、さらに幻の「ゴーストホーウィンスタンプ」という言葉が存在することをご存じでしょうか。
ゴム印などを使用する際に、インクが薄まってくると、インク台にインクを補充します。
インクを多く補充しすぎると、ゴム印を押した時にインク量が多すぎて困ったという経験をしたことがないでしょうか。
まさにそれと同じように、ホーウィンスタンプのインクがコードバンに多く染み込み過ぎると、表面まで浸透してしまうことがあります。
ブラックや#8のような濃い色味では、あまり目立つことはありません。
しかし、バーボンのように生成りに近い色味では、上記の画像のようにくっきりと浸透しているのを確認できることがあります。
上記の画像のスタンプ面は、以下のような状態です↓
ホーウィンスタンプに興味がない方からすれば、これは汚れと同じようなものでイレギュラーなケースです。
革を製造する業者からしても、これで売り物とならないとなれば、これを積極的に行うことはありません。
そういったことから、滅多に出会うことができない幻のゴーストホーウィンスタンプという名称が付けられています!
以下の画像は、二つ折り財布のパーツ取りをした際の、上記とは別のゴーストホーウィンスタンプの裏面と表面です。
スタンプ面のパーツ取りは困難の極み
ホーウィンスタンプは、1枚革の真ん中に押されています。
そのことから、ホーウィンスタンプ部分を製品のフロント部分に合わせてパーツ取りをする場合には非常に困難です。
革自体が最も高額に部類されるので、製品を作る職人としてもできるだけ多くのパーツを取りたい衝動に駆られます。
上記の画像は、ラウンドファスナー長財布の本体外側の型紙を1枚革の上に載せたものです。
ホーウィンスタンプの部分をパーツの真ん中に来るようにパーツ取りを行うと、型紙の左右と下側はハギレ革となり、パーツ取りの効率が悪くなります。
上記の画像の1枚革であれば、本来は端からパーツ取りを行った場合、2枚のラウンドファスナー長財布の本体外側パーツが取れます。
しかし、この場合ホーウィンスタンプ部分を軸にパーツ取りを行うと、ラウンドファスナー長財布のパーツが1枚と、残りの部分は小さい製品のパーツにしかなりません。
こういった要因から、ホーウィンスタンプ部分のパーツ取りが困難であり、希少価値が高いこともご理解いただけると思います。
スタンプ面の製品の使い始めについて
ホーウィンスタンプが綺麗に押された製品を手に入れるのは困難を来たします。
やっとの想いで手に入れた製品を使い始めるときは、だれでも緊張するものだと思います。
スタンプ自体は、ホーウィン社が製造をした証として押されたもので、日常使用でスタンプが消えないように加工されているものではありません。
そういった意味から、使い始めについて悩む方も多いはずです。
そして、ホーウィン社のシェルコードバンは独特の香りがし、オリジナルの風合いも感じたいと思う方も多いのではないでしょうか。
新品の風合いを眺めたり、ちょっとした買い物で一時的に使用したり、新品の状態を感じてから本格的にご使用いただくことをおすすめします。
また、もともとは背面であり仕上げ工程は踏んでいないため、繊維がむき出しの状態となっていて、水分などを吸収しやすい状態です。
スタンプが消えないように床面処理剤などを使用して、表面をコーティングしてから本格的にご使用いただくことをおすすめします!
スタンプ面の手入れ方法
ホーウィンスタンプ面の手入れは、もともと隠れる部分であるため、仕上げ処理が行われていません。
手入れ方法を間違えると繊維が逆に荒れてしまい、ホーウィンスタンプが消えてしまうこともあります。
日頃の手入れを行う際に、クリーナーやリムーバーなど汚れを落とす有機溶剤が含まれたメンテナンス用品のご使用は厳禁です!
それでも、日常のご使用による摩擦による削れによって、ホーウィンスタンプが消えてしまうこともあります。
できる限り長く、良い状態でご使用いただくためにも、正しい方法で手入れを行っていただくことをおすすめします。
ただいま、ホーウィンスタンプを含めたカネ面の手入れ方法に関する特集記事を作成しておりますので、完成まで今しばらくお待ちください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、ホーウィンスタンプについて解説をさせていただきました。
なお、ホーウィンスタンプ面を使用した製品の販売ページは下記のリンク先よりご覧いただけます。
この情報をもとに、コードバン製品に魅力を感じ、製品を長く良い状態でご愛用いただくお手伝いができれば幸いです。
また、塩原レザーではコードバンについて総合的にまとめた特集記事もございます。