日本ではブライドルレザーの製造するタンナーとして一定の知名度があるクレイトン社。
そして、財布や手帳などの素材として使用されていることもあり、流通量もあるクレイトン社のブライドルレザー。
では、クレイトン社はどのようなタンナーなのでしょうか。
結論から言いますと、自動車が開発される前の馬車が栄えたころから馬具用の革を供給し続けた180年の伝統を誇る英国屈指の老舗タンナーです。
今回は、そのクレイトン社についてブライドルレザーの専門店である塩原レザーの塩原朋和が詳しく解説します!
※2022年現在、クレイトン社はスパイヤー社として生まれ変わりました。
クレイトン社とは
クレイトン社は、英国中部にあるダービーシャー州のチェスターフィールドに所在する屈指の歴史を誇るタンナーです。
タンナーとは、生の皮(スキン)を革(レザー)へなめす業者のことです。
正式名称は「Joseph Clayton & Sons Ltd」と言い、日本では「クレイトン社」などと略されて呼ばれています。
創業は1840年で約180年の歴史を誇る老舗タンナーです。
この180年の歴史は英国全体でも屈指の歴史を誇る企業の1つで、クレイトン社の前の道路は「CLAYTON STREET」と名付けられ歴史の長さを物語ります。
しかし、残念ながら現在は身売り状態となっており、引き継ぐ組織が見つからない場合には廃業となってしまう状況です。
※クレイトン社は、新たにスパイヤー社(Spire=尖塔の意味)として生まれ変わりました。
この尖塔という名称は、クレイトン社時代のロゴでも使用されていた町のシンボルである教会の尖塔から来ています!
6年ほど前になりますが、クレイトン社のブライドルレザーについて解説した動画がありますので、こちらもよろしければご参照ください。
[embedyt] https://www.youtube.com/watch?v=9QZE1rsgHwA[/embedyt]
クレイトン社の工場の様子
2014年にクレイトン社へ訪問し、工場内部や従業員の方と対談なども行ってきました。
この内容は訪問当時の内容となり、現状とは異なる場合があります。
クレイトン社は、塩原レザーで扱っているブライドルレザーなどの馬具用皮革のほかに、産業革命で盛んになった機械の動力を伝えるためのベルトなどを製造し大きく成長したタンナーです。
製造納期やコストを抑える取り組みなども行っていて、伝統的なピット槽でのなめし方法のほかにドラムを使用したなめし製法も採用しています。
また、英国やインドなどで人気スポーツであるクリケットのボールの製造も行っています。
近年ではブライドルレザーと人気を二分するコードバンの製造も行っていて、革の製造技術は168種類に及び仕上げ工程を含めると約6000種類の革を製造しています。
なお、クレイトン社へ訪問した際に動画を撮影してきました。
工場の内部の様子などもご覧いただけますので、ご興味がございましたらご参照いただければと思います。
[embedyt] https://www.youtube.com/watch?v=etNuaBeqU8k[/embedyt]
クレイトン社のブライドルレザーの特徴
クレイトン社では、大きく分けて2種類のブライドルレザーを製造しています。
刷毛目の跡が印象的な伝統のトラディショナルタイプとスプレーでグリースを吹き掛けたモダンタイプがあります。
見た目ではブルームの風合いがそれぞれ違い、革も少しモダンタイプの方が柔らかい印象です。
2つのタイプのブライドルレザー
クレイトン社では、伝統的な製法で作られた馬具用品に使うトラディショナルタイプのブライドルレザーを基本的な規格としています。
しかし、自動車の発達と共に馬車の需要が減少し馬具の製造が少なってきた近年では、革製品のメーカーなどの希望に添った仕様のブライドルレザーが主流となっています。
これがモダンタイプのブライドルレザーです。
また、伝統的な革の芯が生成り仕様ものと、芯まで表面のカラーが浸透した芯通しタイプのものがあり、芯通しの加工を施した場合は革の風合いが少し変わります。
塩原レザーで扱うクレイトン社のブライドルレザーは、それぞれ特徴があるので、製品をご注文いただく際は、製品の革の仕様がどのタイプかをご確認いただければと思います。
トラディショナルタイプ
・ショルダー部位
トラディショナルタイプのショルダー部位は、伝統的なブライドルレザーらしい張りと硬さを併せ持ち合わせた風合いで、ブルームがない状態の革の表面は透明感のある素材です。
・ベンズ部位
トラディショナルタイプのベンズ部位は、ベンズ部位の特有のキメの細かさを持ちます。
馬具用品に使用されることが多い規格である4mm前後の厚みの場合は非常に硬い印象ですが、革製品用に1mm前後まで漉き加工をするとかなり柔らかい印象になります。
表面はショルダー部位と同じようにブルームがない状態の革の表面は透明感のある風合いです。
モダンタイプ
・ショルダー部位
モダンタイプのショルダー部位は、トラディショナルタイプのショルダー部位とは異なりもともと薄い2mm前後に仕上げられている場合が多く全体的に柔らかい風合いです。
また、表面からブルームが取れた状態の革の風合いはマットな印象です。
・ベンズ部位
モダンタイプのベンズ部位は、トラディショナルタイプのベンズ部位とは異なりもともと薄い2mm前後に仕上げられている場合が多く全体的に柔らかい風合いです。
また、革製品用に1mm前後まで漉き加工をするとかなり柔らかく、ショルダー部位と同じようにブルームが取れた状態の革の表面はマットな風合いです。
カラーサンプル
クレイトン社のブライドルレザーのカラーは、タイプや部位に関係なく馬具用品でよく使用されるブラックやダークブラウンの濃いめのカラーが基本規格です。
しかし、特注として明るい色なども発注できるので、近年はレッドカラーなども製造され需要の多さ次第で無限に色が用意されています。
以下は、塩原レザーで扱う主なカラーのサンプルです。
・ブラック
・ダークブラウン
・タン
・ネイビー
・ダークグリーン
・レッド
ブルームの特徴
クレイトン社のブライドルレザーのブルームの特徴は、上記でもお伝えした通りトラディショナルタイプとモダンタイプによってその表情は大きく変わります。
以下は、それぞれのブルームの特徴です。
・トラディショナルタイプのブルーム
トラディショナルタイプは、伝統的なブラシでブルームのもととなるグリースを塗り込んでいる為、ブルームが噴き出してきた際には刷毛目の跡がくっきりと出てブライドルレザーらしい見栄えです。
表面にグリースの層がある場合は、一定の間、保管をしていただくことによりブルームが増してきます。
なお、トラディショナルタイプタイプは一度ブルームが表面からなくなると再ブルームはしないと思ってください。
・モダンタイプのブルーム
モダンタイプのブライドルレザーは、スプレーでグリースを吹きかけているため、革の表面に一定の蝋分の層が乗っかっている風合いになります。
一定の間、保管をしたとしても多くブルームが増すことな少なく、全体的にブルームは薄い印象です。
なお、モダンタイプは特に一度ブルームが表面からなくなると再ブルームはしないと思ってください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
クレイトン社のブライドルレザーは、その歴史や伝統製法から人気の素材です。
しかし、皮から革へなめす時間は長く、革が完成するまでに膨大な費用が掛かります。
先にお伝えした通り、現在、クレイトン社は身売り状態のようです。
これまで多くの同社の素材を使用してきたものとしては、1日も早く新たに引き継ぐ人材が現れてくれることを願っています。
現状はまだ革の在庫が巷に流通しておりますが、今後、デッドストック素材として価値が上がる可能性もあります。
ということで、クレイトン社のブライドルレザー製品のご購入を検討中の方は、この情報をご活用いただければと思います。
なお、塩原レザーのクレイトン社製ブライドルレザーを使用した製品はこちらからご覧いただけます。