ブライドルレザー製品は高価であるため、梅雨の時期や突然のゲリラ豪雨などの雨水から、製品を守りたいという方も多いのではないでしょうか。
また、ズボンのポケットに入れておくと、汗が製品に染み込み痕じみやカビが生えることもあります。
そういった場合には、製品に防水加工を施すことで防ぐことができます。
そこで今回は、ブライドルレザー専門店である塩原レザーの塩原朋和が、ブライドルレザーの防水性や実験、防水加工の手順などについて解説したいと思います!
この特集記事を最後までご覧いただきますと以下の内容が分かります!
・ブライドルレザーの防水性
・防水加工について
・ブライドルレザーの防水加工実験
・防水加工に必要な用品
・防水加工の手順
はじめて当サイトへお越しいただいた方もいらっしゃると思います。
本題に入る前に、この記事を書いている塩原レザーについて簡単にご紹介をさせていただければと思います。
2008年にブライドルレザーの専門店として塩原レザーは創業しました。
2016年からはコードバンを定番素材に加え、ブライドルレザーとコードバンの専門店として運営しております!
コードバンもブライドルレザーも、革を製造をする業者や仕上げ方法によって、風合いや印象など素材感が異なります。
塩原レザーでは10年以上に渡って製品を製作しており、素材や製品について最前線で日々観察をしているので信用していただける内容だと思います。
なお、塩原レザーについて、下記のリンク先にてご覧いただけます!
ブライドルレザーの防水性
ブライドルレザーは、もともと革の表面に蝋引き加工がされているので、防水性は他の皮革に比べたら高い革です。
しかし、製品をご使用いただいている間に、蝋分は徐々に取れ、革は水分を吸収やすい状態になります。
水分は雨水だけではなく、人の汗なども含みます。
気温が湿度が高い夏場に、ズボンのポケットに製品を入れていると、人の汗が革に染み込み乾いた後にカビが生えてしまうこともあります。
革に水分が浸透すると、革の風合いが変わるだけではなく、水滴の痕が残ることやカビが生えてしまうことがあります。
防水加工について
定期的な蜜蝋ワックスなどによる手入れによって、革の表面に多少の防水性が生まれますが、その有効期間は限定的です。
ブライドルレザー製品は高価な場合が多いため、より良い状態で長く使いたいと思う方が多いと思います。
そういった場合には、フッ素樹脂を原料とした防水スプレーをご使用いただくことで、見た目の風合いを変えることなく、製品へ防水加工を施すことができます。
なお、防水性は時間と共に効果が弱まってきますので、その都度、防水加工を施します!
ブライドルレザーの防水加工の実験
高価な製品に、防水スプレーを吹くことに抵抗を感じる方も多いと思います。
そこで、この項目では実際にブライドルレザーを使用した防水スプレーによる実験をご紹介したいと思います。
実験素材は、セドウィック社製ブライドルレザーのロンドンタン色です。
明るい色の防水加工による見た目の色味の変化
明るい色のブライドルレザーに防水スプレーを吹くと、色味の変化が気になると思います。
1枚目の画像は、左側が防水スプレーを吹き付けていない部分で、右側が吹き付けた部分です。
2枚目の画像は、スプレーを噴射後、10分ほど時間がした後に撮影をしました。
防水スプレーを吹き付けた時点では、水分を吸収するため革の色味が濃くなりますが、時間を置くことでほぼ解消されます!
※ただし、100%もとの色に戻るわけではありません。
また、水分が多く含んだ部分は、角度を変えてみると見た目にムラがでる場合があります!
気になる方は、同じように事前にハギレ革で実験をしてから、防水スプレーをご使用ください。
防水加工を施した部分としていない部分の防水比較
画像の左側は防水加工を施していない部分で、右側が防水スプレーを吹き付けた部分です。
1枚目は、それぞれに水滴を垂らした直後の画像です。
2枚目は、水分を革の表面に載せ、5分ほど経過した後の革の表面です。
防水加工を施していない左側は、水分が革に浸透しているのが分かると思います。
3枚目は、24時間ほど経過した後の画像です。
防水加工をしていない左側は、薄っすら水分が浸透した痕が残っているのが分かると思います。
上記の1枚目の画像は、ブライドルレザーが水分を含んで5分ほど経過し、繊維が膨張し水ぶくれを起こしている画像です。
2枚目は、24時間が経過し多少は目立たなくなったものの、じっくり見ると水ぶくれの痕が残った状態の画像です。
防水加工に必要な用品
防水加工を施す前に準備するものは、以下の通りです。
また、防水スプレーを使用する場合は室内ではなく、換気の良いベランダや玄関先で行ってください。
防水スプレーを吸い込むと人体へ影響を及ぼしますので、ご使用の際にはご注意ください!
・防水加工をする対象製品
・防水スプレー
※防止スプレーは、コロンブス社のアメダスがおすすめです!
・新聞紙
※スプレーによる吹き付けは、周辺への影響を避けるため、新聞紙などを敷いた上で行うことをおすすめします!
・手入れ用クロスまたはT-シャツのハギレ
※スプレーを掛け過ぎた場合やスプレー後の乾拭きに使用します。
※防水溶剤をクロスに染み込ませると、クロス自体が防水加工されてしまいますので、使い捨てのT-シャツのハギレで行うことをおすすめします!
・馬毛ブラシなどのホコリ落とし
※馬毛ブラシがない場合には、使い古した歯ブラシなどでも代用できます!
防水加工の手順
防水加工の用品と場所の準備が整いましたら、以下の手順にて手入れを行っていただければと思います。
※製品の本体外側のみを防水加工することを想定しています!
手順1:防水加工を施す部分とホコリを落とす
製品の状態を確認しながら、ステッチの溝などに溜まっているホコリを取り除きます。
ホコリが付いたまま防水加工をしてしまうと、防水溶剤と合わさることでホコリが溝などで固まり、取れなくなってしまうことを防ぐためです。
また、革の表面やコバが擦れていて、革の内側の繊維が見えている場合には、染色などをしてから防水加工を施すことをおすすめします。
これは防水加工を施してしまうと、染料も防水加工によって革へ浸透しないからです。
なお、染料による手入れ方法は、下記のコバに関する特集記事で解説しています!
手順2:換気の良い場所の選定とスプレーの試し吹き
防水スプレー(アメダス)は、スプレーを噴射すると広範囲に粒子が拡散します。
これを吸い込んでしまうと、人体へ影響を及ぼすことがあるので、必ず換気の良い場所で行ってください。
また、製品の下または周りに新聞紙などを敷くことをおすすめします!
下準備が整いましたら、実際に製品に吹きかける前に、ハギレ革などでスプレーの具合などを確認することをおすすめします。
手順3:製品から20cmほど離してスプレーを吹き付ける
実際に、製品に防水スプレーを吹き付けるときは、製品から20cmほど距離をおいて吹き付けて下さい。
製品との距離が近すぎると、狭い範囲に大量の防水溶剤が染み込んでしまい、仕上がり後にムラになる場合があるのでご注意ください。
もし、一部分だけに溶剤が付き過ぎた場合は、準備しておいたクロスなどで拭き取ります。
一部分に多くの溶剤が染み込むと、その部分が水ぶくれを起こし、痕に残ってしまう場合があります!
手順4:軽く乾拭きをする
防水スプレーを製品に噴射すると、徐々に製品に溶剤が仕込みまれているのが確認できると思います。
溶剤が製品に浸透すると、製品の見た目がマットな状態です。
軽く乾拭きをすることで、防水スプレーを吹き付ける前に近い状態に戻ります。
以上で、防水スプレーによる加工は完了です!
補足:防水加工後の実験
防水加工を施した製品に、実際に水滴を垂らしてみた実験です。
時間を置いても、革に水分が染み込むことなく、斜めにすると水滴が滑り落ちていきます。
3枚目は、水滴が完全に製品から落ち、痕が残っていない画像です。
これで梅雨の時期やゲリラ豪雨、ズボンのポケットに入れている財布の汗の染み込みも、気にならなくなると思います!
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、ブライドルレザー製品に防水加工の施す方法などについて解説をしました。
この情報をもとに、製品を長くご愛用いただければと思います。
なお、塩原レザーでは、蜜蝋ワックスなどを独自に開発しております。
他の手入れ用品にもご興味がございましたら、販売ページをご参照ください。
メンテナンス用品一覧ページはこちらから!
また、ブライドルレザーについて、総合的にまとめたページもございますので、よろしければご覧ください。