J.ベイカー社のブライドルレザーとは

革製品に詳しい人々の間では、伝説のタンナーと呼ばれるJ.ベイカー社。

なぜ、そのように呼ばれるのでしょうか!?

それは革をなめす方法は原始的な2000年前のものと言われ、今でも利益を追求するよりも伝統を受け継いでいるからです。

そんな魅力的な革を製造するJ.ベイカー社について、ブライドルレザーの専門店である塩原レザーの塩原朋和が解説します!

J.ベイカー社とは

J.ベイカー社の工場の正面画像

J.ベイカー社は、英国南西部の中堅都市エクセターの東に位置し、デヴォン州ののどかな町コリトンに所在する英国屈指の伝統を誇るタンナーです。(タンナーとは皮を革へとなめす業者のことです。)

創業は1860年で約160年の伝統を受け継ぎ、今では世界的にも珍しい昔ながらの時間を要するオークバーグの皮から抽出されるタンニンエキスを持ちた製法に拘り、なんと1枚の皮を革へとなめす工程に1年半を要します。

正式名称は「J.&F.J.BAKER & CO Ltd.」と言い、日本では「J.ベイカー」や「ベイカー」と呼ばれています。

元々はローマ時代からベイカー家が家業として経営を行っており、現在のオーナーであるアンドリュー・パー氏で5代目で4代目はアンドリュー氏の父であるハリー・パー氏です。

J.ベイカー社からの手紙の画像

2014年に取材を行いましたが、残念ながらアンドリュー・パー氏は出張中であったため画像こそないものの、昔ながらのレターなどで交流を図っております。

10年ほど前の動画になりますが、動画にてJ.ベイカー社について解説をしていますのでよろしければご参照ください。

 

J.ベイカー社の工場の様子

J.ベイカー社に入る道の看板の画像
J.ベイカー社に入る道に小さく「THE TANNERY」の看板があります!(ガーデンショップは隣りの花屋さんの看板)

工場の入り口に大きな看板があるわけでもなく、タイムスリップしたかのような雰囲気の中で、2000年前の製法を受け継ぎながら皮の状態から革へなめし工程が日々進行しています。

工場内に入ると独特のあのJ.ベイカー社の革のにおいが漂っています!

塩漬けされた原皮の画像

足を進めると塩漬けされた原皮の塊りが無造作に置かれています。

まだ毛のついた状態で、生々しさを感じます!

この後、この原皮は脱毛を処理をし、不要な皮膚などを取り除いた後にピット槽に漬けられます。

J.ベイカー社のピット槽の画像

このピット槽は、オークバーグのチップから溶け出る濃度がそれぞれ違い徐々に濃いピット槽へと漬けられ1年以上の時間をかけて皮から革へとなめします。

タンニンなめしを行う他の業者でも、近年はアフリカなどの樹の皮が使用されることが多いですが、J.ベイカー社では伝統のオークバーグの皮が使用されています。

J.ベイカー社のオークバーグのチップを保管する場所の画像

ピット槽の脇にオークバーグの皮を保管する場所があり、独特の香りを放っています!

建物は複数あり迷路のようになっていて、複数の出入り口があるため自分がどこにいるのか迷ってしまうほどの複雑さです。

J.ベイカー社の革を干している画像

2階にはなめし終えた革が干されていたり蝋引き加工をする作業台などがあります。

J.ベイカー社の蠟引き加工をする作業台の画像

 

J.ベイカー社が製造する革の特徴と部位や種類とカラーサンプル

J.ベイカー社のブライドルレザーは、ワイルドかつ繊細な風合いで、好き嫌いがはっきり分かれる素材ではないかと思います。

見た目は細かいキズが多いことがありますが、オークバーグでじっくりと時間を掛けてなめされた革の内部は繊維がコラーゲン質と絡み合い非常に密度の高い仕上がりです。

塩原レザーでは、主にベルト用の素材として使用しておりますが、一度、ベルトを装着すると虜になる人が続出するほど他とは風合いの違うブライドルレザーです。

ブライドルレザーの部位と革の種類

時間を要する製法で作られているJ.ベイカー社のブライドルレザーは、種類こそ多くはないもののショルダー部位、ベンズ部位、バック部位の基本的な部位に加えて靴底用の革なども製造しています。

・ショルダー部位:

J.ベイカー社のブライドルレザーのショルダー部位の画像2

ショルダー部位特有の首筋部分のシワが多く残りワイルドな風合いです。

 

・ベンズ部位

J.ベイカー社のブライドルレザーの画像

ベンズ部位もショルダー部位と同様にワイルドな風合いで見た目の美しさよりも馬具として十分な強度を追求している印象です。

 

・バック部位

J.ベイカー社のブライドルレザーのバック部位の画像
画像の右奥の革がバック部位です。

バック部位はショルダー部位とベンズ部位を足した素材のため、上記の部位と印象は変わらないものの、厚みが5.5㎜の2mほどの長さに圧倒されます。

 

・ソール革

J.ベイカー社のソール革の画像

J.ベイカーが製造する革で馬具用の革と同じくして有名なソール革があります。

ソール革とは高級紳士靴の底などに使用される革のことで、ドイツのレンデンバーグ社の底革と並び世界的にも1,2を争うほど有名な革です。

 

J.ベイカー社のカラーサンプル

J.ベイカー社のブライドルレザーは、今でも伝統的な馬具用の革を作る背景があるため、馬具としてよく用いられるダーク系のカラーが主体です。

その他、定番のブラックを始めタンカラー、そして、特注カラーとしてネイビーやダークグリーンもあります。

ブラウン系のカラーは、一番濃いダークハバナからそしてキャメルよりも薄いタン色、無染色のナチュラルまで揃っています。

塩原レザーで取り扱うカラーは以下の通りです。

・ブラック:見た目は光沢感がありますが、基本的にはマットな風合いのブラックでエイジングと共に艶が増すタイプ!

J.ベイカー社のブライドルレザーのブラックカラーの画像2

・ダークブラウン:深みのあるこの色は日の光りにあたるとバーガンディのような色味でもあります!

J.ベイカー社のブライドルレザーのダークブラウンの画像

・ナチュラル:染色を施していない生成り色!

J.ベイカー社のブライドルレザーのナチュラルカラーの画像2

 

J.ベイカー社のブルームの特徴

J.ベイカー社のブライドルレザーのブルームの画像

J.ベイカー社のブライドルレザーは、表面にねっとりした分厚いグリースが塗り込まれてあり、寒い時期には表面が真っ白にあるほどのブルームが噴き出しています。

しかし、分厚く塗り込まれたグリースは運搬をする際にはがれ落ちやすく、革製品に加工をするときにはすでになくなっていることが多いです。

J.ベイカー社のブライドルレザーの最大級のブルーム画像

上記の画像が、J.ベイカー社のブライドルレザーで一番よくブルームが噴き出している状態の画像です。

湿気のある時期や温度差が激しく寒い時期になると再び白くブルームが浮き上がってくることもあります。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

J.ベイカー社のブライドルレザーは、見た目を重視される方には細かいキズなどが多いので上級者向けの素材です。

しかし、ベルトを一度ご使用いただければその良さを革の風合いがご理解いただけると思います。

製品のご購入を検討中の方は、この情報をご活用いただければと思います。

なお、塩原レザーのJ.ベイカー社製ブライドルレザーを使用した製品はこちらからご覧いただけます。